書籍紹介「対人支援の行動分析学~看護・福祉・教育職を目指す人のABA入門」

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書籍紹介「改訂版 対人支援の行動分析学~看護・福祉・教育職を目指す人のABA入門」です。行動アシストラボ研究員の堀越が担当します。

著者は、ABAを海外で学び日本で活躍している、今本繁氏、島宗理氏の両名です。出版はふくろう出版で2008-10-7初版刊行です。

行動分析学入門にハードルの高さを感じているときに出会った

本書との出会いは、行動分析学入門(産業出版)の勉強中でした。“入門”というわりにやたら専門的で「一見さんお断り」のようにハードルが高いなぁと感じていました。

ABAを学ぶ目的はなんといっても「福祉の職場で早く活用したい」以外にはありませんでしたから、どこのページを見たら手っ取り早く活用できるかわからない教科書なんて嫌だと気が焦っていました。

そのとき本書のサブタイトルの「福祉」が目に入り手にとったがきっかけです。

図と文字の量が頃合いの本書はまさに私好みでした。

気に入った最大の特徴は、事例に沿ってABC分析をしていくところです。これにより、現状をどうとらえて、ABC分析を行えばよいかがイメージできました。

また、行動分析学入門/産業図書の著者の一人である島宗理氏が書いています。出てくる専門用語も同じ表現のため、並行して学ぶには相性がいい本です。

それは、本書の2つコンセプトが物語っています。

  1. 行動分析の基本的な枠組みである「行動随伴性」を理解し、日常の行動について随伴性を分析できるようになる。
  2. 自身の行動目標を設定し、実際に介入を行うことで応用行動分析による実践法を体験学習してもらう。

特に2の“実際に体験して覚える”というのはすぐ試したい人にぴったりなコンセプトですよね。

次に章立てを紹介しますが、その中に「パフォーマンスマネジメント」があります。島宗理氏の著書「パフォーマンスマネジメント」の活用を紹介していますので、後に学ぶのなら押さえておいて損は無いと思います。

  • 第1章 人間行動の理解の枠組み
  • 第2章 行動の法則
  • 第3章 行動のアセスメント
  • 第4章 シングルケーススタディ:介入の評価
  • 第5章 理論的分析:ひとはなぜそのように行動するのか?
  • 第6章 行動変容:環境を変えると行動が変わる
  • 第7章 問題行動に対するポジティブアプローチ
  • 第8章 恐怖や不安へのアプローチ
  • 第9章 セルフマネージメント
  • 第10章 パフォーマンスマネジメント
  • 第11章 医療リハビリ分野の応用
  • 第12章 コミュニティや社会問題へのアプローチ

習うより慣れろ

先ほども触れましたが、ABAを理解するなら活用してなんぼのところがあります。本書をベースにして、自分の関心のある課題を行動随伴性ダイアグラムに入れていくことで練習になります。そこで、分からないところは繰り返し練習あるのみです。

ある程度理解できるようになったら、「行動分析学入門」にチャレンジし、詳しい用語の理解や活用方法を学習することをお勧めします。

ABAに対する私の偏見と、実際に役に立った事例

こんな面倒な方法は嫌だな

ABAを学び始めの時は、ABC分析をするためにそれぞれの随伴性を四角い枠に当てはめて考えますよね。

学ぶ前のABC分析のイメージは、「四角い枠に行動書いて本当に行動の意味わかるの?人間はこんなに単純なものじゃない」と思っていました。おまけに学ぶと、その活用方法がややっこしくて(4つの随伴性の特徴など)、こんな面倒な方法は嫌だなって思っていました。

最初は、否定的な見解だったのです。ネガティブな感想を書きましたが、ここまでひどくなくてもABAを学ぶ前って、知らない外国人と話すのと同じくらい構えてしまいませんか。

さて、実際に役に立った場面を紹介します。

偏見はどこへやらズッポリハマってしまいました

私は知的障害者の生活支援員をしているのですが、利用者の問題行動でパニックになり自傷や他害に至るケースがありました。

そこで、本書の「第7章 問題行動に対するポジティブアプローチ」を開きました。まず、アセスメントが大切であり、ベースラインを場面や時間軸ごとに記録することと具体的に書いてありました。

また、なぜ問題行動が起きるのかをフローチャートで示しているページがありました。フローチャートにそって行動を当てはめるだけで、行動の機能が推測できる優れものです。これにより、機能(後続事象)が読みやすくなりました。このくだりは、福祉の支援者は欲しいところなのではないでしょうか。

さらに、次のページに先行条件をどのように操作するのかが書いてあります。アプローチとして、「先行条件」に焦点を当てたアプローチ、「結果」に焦点を当てたアプローチ、「確立操作」に焦点を当てたアプローチと考え方が書いてあります。

もちろん、実際の場面と右から左へと活かせるわけではありませんが、図つきで書いてあると、ものすごいフランクな伝え方ですが、アシスト感が半端ないです。

結果、紆余曲折あったものの利用者の行動が維持する理由が理解でき、それを操作することにより、半年くらいかかりましたが行動が改善されたのです。

一つの成功体験は強烈な好子となりました。以降、先ほど書いた偏見はどこへやらズッポリハマってしまってしまいました。

行動分析学を「早く使いたい」という方におすすめ

福祉関係に従事する初学者の方にはお勧めです。特に私のように「早く使いたい」という方には特にお勧めです。

どの勉強も実践に移さなければ、身になりません。ABAも漏れずにその通りだと思います。

だからと言って、最初のうちは本書の内容をすべて覚える必要はありません。なぜなら、「ABAが使えるかどうか」の確認をするのに、全て理解してから介入するのは時間がかかりすぎます。小さな課題を分析し、成功したら(もしくは、何がしかの手ごたえを感じたら)、徐々に勉強を深めることが良いと思います。

あらゆるABAの本は、あなたの現場のケースの解決策は書いてありませんが、見方・捉え方や介入のパターンや原理原則は書いてあります。

そういった意味でも、必要な情報がコンパクトにまとまっており、端的な解説が理解しやすいです。

私のように、とりあえずABAを手っ取り早く活用できる分かりやすい本はないの?とお探しの方に、お勧めの一冊です。

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