書籍紹介「自由と尊厳を超えて(Beyond Freedom and Dignity)」

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書籍紹介「自由と尊厳を超えて」 B・F・スキナー著。担当は榎本です。

2013年に日本語に再訳された本です。作者は、行動分析学の創始者であるB・F・スキナー氏。

なんと最初の日本語訳は1972年に発売されています。ちなみに私の生まれた年。

その時のタイトルは「自由への挑戦-行動工学入門」となっています。当時は、「行動分析学」とは訳されずに、「行動工学」と言っていたのでしょうか。なかなか興味深いですね。

さて、タイトルの「自由と尊厳を超えて」とはどういう意味でしょうか。

訳者の山形浩生氏が下記のように解説しています(この本は訳者のあとがきも数十ページあり、内容もとてもためになります)。

ぼくたちが自由と思っているもの

自由というものはもともとなく、人は常に周囲からコントロールを受けていて、あらゆる行動はその結果にすぎない。

ぼくたちが自由と思っているものは、実は単に「コントロールを受けているのにそれを知らない」というだけの話だ。

行動分析学を勉強している自分にとっては、まさしくその通り!と思うのですが、これはなかなかすぐには受け入れられないことなのでしょう。

「尊厳」については、一般に使われる尊厳とは若干意味が異なり、「人にほめられる」ということとしています。

たまたま立派なことをするような環境におかれていた

歌がうまい、勇敢だ、お金儲けがうまい、電車で人に席をゆずる、といった人にほめられる行動はたくさんある。でもやがて、それが単に環境から刺激を受けた結果でしかないことが明らかになる。

すると、「あの人はたまたま立派なことをするような環境におかれていたんだね」と思うだけで、ちっともほめられなくなる。(一部要約)

これが「尊厳を超える」という意味ですね。

私もよく、セミナーや研修などで、

行動の習慣が続かないのはあなたの意志や性格の問題ではありません。たまたま今、環境で行動が強化されていないか、過去に強化されて来なかったからです。

決して、あなた自身が悪いわけではないのです。自分を攻撃して思考停止に陥らず、環境を整えて、行動が起きるようにしましょう。

と伝えたりしています。自分自身にレッテルを貼って、ダメだと決めつけずに、前向きに建設的に考えることができるようになることが大事です。

世の中の常識が変わるときがくるか

とても素晴らしい本ですが、なかなか一般的には受け入れられないとは思います。

人間の行動は、そこに意志や心などが先にあり、それが引き起こしている、という考え方が常識。

そうじゃないよ、そんなものもともとないよ、とでも言おうものなら、ちょっと変わった人扱いされます。

この本をスキナーが書いたのは、1971年。私が生まれる前の年です。当時はなおさら変人扱いされたでしょう。

いま現在は、意志や心という目に見えないものが原因で、行動が引き起こされるのが当たり前と考えられています。

でも、世の中の「当たり前」は、どこかで大きく覆ることがあります。いままでの歴史でも、そんなことはたくさん起こってきました。

以前は「病気の原因」は「呪い」のせいとされていたりしました。人類の歴史の長さで考えれば、ほんのつい最近まで、それが当たり前だったのです。

雨が降るのも、風が吹くのも、地震が起きるのも、神様が起こしているからだとされていました。

それが常識だった当時、それに対して異論を唱える科学者は変人扱いされていました。

常識は覆る時がきます。それを「パラダイムシフトが起きる」といいます。

行動に関しても、パラダイムシフトが起きるときがくるかもしれません。

いつかは科学的な考えが当たり前で、目に見えない意志やこころが原因だ、と考える人の方が、変人扱いされる時がくるかもしれないのです。

病気や自然現象が、目に見えない呪いや神様が原因だといっているのと同じように。

もしそんなパラダイムシフトが起きたとしたら、そのとき、果たして世の中はどうなっているのでしょうか。

行動に関して興味がある人、ぜひおすすめです。

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