今回のテーマは「確立操作」です。

確立の「立」を皆さん間違いがちで、私どももたまに間違えてしまいますが、いわゆるパーセントとかの「率」である「確率」ではないですね。

「〜を確立する」という方の確立です。

そこが注目ポイントだったりします。

確立操作は行動分析学を学んでいく中で躓きやすいところで、長年やっている人でも少し混乱していしまう部分があります。

なぜこの「確立」という文字なのかを意識してもらうといいかもしれません。


確立操作とは

では確立操作とはなんでしょうか。

好子や嫌子のことを「欲する刺激や避けたい刺激」と説明してきましたが、その強弱を変えるのが確立操作です。

例で見ていきましょう。

Aのケース:夕方ファミレスでハンバーグを食べることになった。朝から何も食べていないのでとても美味しく感じた。

Bのケース:夕方ファミレスでハンバーグを食べることになった。ただ、昼ご飯に大盛りの牛丼を食べたので、あまりお腹も空いておらず、そんなに美味しく感じなかった。

同じタイミングで同じ行動をとっていますが、結果が異なっていますね。

AとBの何に違いがあるのでしょうか?

次の例もみてみてください。

Aのケース:夜遅く帰宅する時、近道だけど街灯のない暗い道がある。さっきとても怖いホラー映画を見たせいか、なんだかその道を使うのを怖く感じる。

Bのケース:夜遅く帰宅する時、近道だけど街灯のない暗い道がある。さっきまで友達と楽しく飲んでよい感じに酔っぱらっているせいか、あまり怖く感じない、というケースです。

AもBも、ともにありそうな状況でが、AとBで少し変わってきますよね。


行動にも異なる影響を与えそうですが、どう分析すればいいでしょうか。

2つのケースの違いを分析するには、実は確立操作に注目する必要があります。

確立操作とは、好子・嫌子の行動への影響力を変える要因。

確立操作を含めて分析すると、ケースAとケースBの行動の違いを記述し理解できるようになります。


好子の影響力を変える確立操作

ABC分析や行動随伴性ダイアグラムを使って解説します。

まず好子の影響力を変える確立操作について。

先ほど書いた例をもう一度みてみましょう。

Aのケース:夕方ファミレスでハンバーグを食べることになった。朝から何も食べていないので、とても美味しく感じた。

ここで確立操作が何かというと「朝から何も食べていない」です。

この「朝何も食べていない」という確立操作があるため、ハンバーグをとても美味しく感じるわけです。

つまり、ハンバーグという好子が非常に強く影響を与えるようになっているのです。

上はABC分析、下は行動随伴性ダイアグラムです。

これは以前、別の章で書いた内容ですので、ぜひ思い出してください。

直前→行動→直後で、好子や嫌子の「あり→なし」「なし→あり」といった変化を記述するのが行動随伴性ダイアグラムですが「朝から何も食べていない」という確立操作はどこに影響を与えるのでしょうか。

ダイアグラムをみてみると「ハンバーグの味なし→味あり」という変化自体は変わりませんが、「ハンバーグの味」という刺激そのものに影響を与えています。


Bのケースと比べると分かりやすいかと思います。

Bのケース:夕方ファミレスでハンバーグを食べることになった。昼ご飯に大盛りの牛丼を食べたので、あまりお腹も空いておらず、そんなに美味しくは感じなかった。

直前→行動→直後の記述は全く同じですが、確立操作だけが違います。

それにより、ABC分析ではハンバーグを食べて、そんなに美味しくないという結果が生じることになります。

両方のケースでのABC分析を見てもらうと分かりますが、結果の矢印はどちらも上向きです。

ただ大きい矢印と少し小さい矢印になっています。

同じ好子を得ていますが、この強さ・影響力が変わっているわけです。

「お昼ご飯に大盛りの牛丼を食べた」という確立操作によって、「ハンバーグの味なし→味あり」という変化は変わらないものの、ハンバーグという好子の持つ影響力が低下しています。


確立操作はどこに影響を与えるのかに注目してください。

確立操作は「好子の強弱」に作用し、間接的に行動に影響を与えています。

ここのところが確立操作を理解するための第一歩ですのでしっかり押さえましょう。


嫌子の影響力を変える確立操作

続いて嫌子に対する確立操作をみていきましょう。

例で説明します。

Aのケース:夜遅く帰宅するときに、近道だけど街灯のない暗い道がある。さっきとても怖いホラー映画を見たせいかなんだかその道を使うのが怖く感じてしまう。

確立操作にあたるものは「とても怖いホラー映画を見た」になります。

ABC分析と行動随伴性ダイアグラムで記述すると次のようになります。

ABC分析のC.結果をみると「早く帰れる」けど「怖い」という結果があります。

行動随伴性ダイアグラムでは「(帰宅にかかる)時間あり→時間なし」「暗い道なし→暗い道あり」となっています。

暗い道というのが嫌子で、近道すると暗い道が出現してしまい、それが「怖い」という結果をもたらしているわけですね。

Aのケースの場合、とても怖いホラー映画をみたため、暗い道という嫌子の影響力が強くなり、怖さもより強く感じてしまうことになります。


同じシチュエーションの別のケースもみてみましょう。

行動随伴性ダイアグラムをみると先程と同じく「時間あり→時間なし」「暗い道なし→暗い道あり」ですが、確立操作に違いがあります。

友達と楽しく飲んだ後でいい感じに酔っ払っているため、暗い道という嫌子の影響力が弱くなり、あまり怖くないわけです。


好子の例でも説明しましたが、嫌子でもメカニズムは同じです。

確立操作がどのように影響しているかというと、今回の場合は「嫌子の強弱」に作用することで、間接的に行動に影響を与えることになります。


確立操作についての補足

確立操作についての補足です。

睡眠不足という例を使って説明します。

睡眠不足は例えばABC分析で次のように記述できます。

あるいはもう少し状況を把握した上で「昨日帰宅したのが午前1時で4時間しか寝ていない」ことが分かったとします。

そうすると次のように記述することもできます。

確立操作の書き方が異なっていますが、どちらが適切かというと後者になります。

確立操作にはなるべく事実を記述するようにしてください。

睡眠不足で眠いという表現は、あくまで本人の主観であり感覚的なものです。

一方で「帰宅したのが午前1時で4時間しか寝ていない」であれば事実の記述であり、何が確立操作として働いたのかも把握しやすくなります。


別の例でもみてみましょう。

空腹をどう記述するかという例です。

お腹がすいているから「とても美味しい」という結果が現れ、買い食いという行動が強化されています。

一方でもう少し事実に即して記述すると次のようになります。

この記述であれば「とても美味しい」という結果をもたらしているのは、「朝から何も食べていない」という事実が確立操作として働いていることが分かります。


このように確立操作にはなるべく客観的な事実を記述できるといいでしょう。

眠いだとか、お腹が空いているではなく、○時間しか寝ていないとか、朝から何も食べていないといった記述の方が適切です。

確立操作には主観的、感覚的な状態ではなく、それを作り出した操作・出来事、背景を記述してください。

そうすると、その行動の実情や文脈を理解しやすくなります。

主観や感覚の場合、それに介入するのは難しくなりますが、一方で操作・出来事・背景といった事実であれば、それを手がかりにより良い改善の手段を見つけやすくなります。

睡眠不足と記述されているだけであれば「睡眠時間を増やす…?」くらいの解決策しか見えませんが、帰宅したのが午前1時だとか、睡眠時間が4時間しかないであれば、早めに帰宅する方法とか、帰宅が遅くても睡眠時間を増やす方法を検討できるかもしれません。


簡単なまとめ

今回は「確立操作」をテーマにお伝えしてきました。

確立操作は難しいし、ややこしいです。

一番大事なところは、確立操作は「好子・嫌子の働きを強めたり弱めたりする」ことを通して、行動に影響を与えているということです。

確立操作への理解を深めることで、行動を正確に分析できるようになったり、介入案を作る際の幅も広がっていきます。

確立操作を踏まえて分析する際のもう1つのポイントは、確立操作を主観的・感覚的な状態で記述するのではなく、なるべく客観的な操作・出来事・背景で記述することです。

好子や嫌子に影響を与えている具体的な要因が分かれば、それらへアプローチしやすくなります。

ポイントを押さえながら繰り返し何度も分析の練習をして、確立操作というものへ慣れていってください。