今回のテーマは「並立随伴性」です。

難しく感じる言葉かもしれませんが、実際にみてみるとそんな難しい概念ではなく「確かにそうだよね」とわかるかと思います。

両立しない行動が2つ以上ある

例で説明します。

行動には1つの随伴性だけではなく、いろいろなパターンが組み合わさっているケースもあります。

まずは、両立しない行動が2つ以上あるケースです。

例えば、セミナーの資料を作るという行動と、スマホで遊ぶという行動は両立しません。

資料を作りながらスマホで遊ぶことはできないですよね?

逆でも同じです。

一方の行動をしている瞬間には、他方の行動は実行できません。

ABC分析してみると次のようになります。


Aの先行刺激の中では「1週間後にセミナーの講師をする」ことになっています。

この人が取り得る2つのB.行動が「セミナーの資料を作る」「スマホで遊ぶ」です(もちろん厳密にはこの2つだけではありませんが)。

ABC分析のダイアグラムを見れば、どっちの行動もありえそうです。

セミナーの資料を作成するという行動をしたら「資料が少し完成に近づく」という結果が得られます。

あるいはスマホで遊ぶという行動をしたら、この場合は「仕事をしないで済む」という結果が得られます。

もしかしたら「スマホのゲームが楽しい」「スマホでいろいろな情報が見られる」などの結果も得られるかもしれません。

 

人によっては「資料を作りながらスマホを見る」と同時にできるんじゃないかと思われるかもしれませんが、その瞬間だけ切り取ってみると、必ずどちらかしかできません。

資料を作成しながら同時に「スマホを見る」はできません。

これが「両立できない行動」ということです。

では実際、どっちの行動をやってしまうのかはABC分析のダイアグラムを見ることで分かります。

この例で見ると「資料が少し完成に近づく」というのは、非常にいいことで行動が強化されそうなんです。

しかし、実はたくさんあるセミナーの資料の中の一部しか進まないという結果より、スマホで遊ぶ方ことで得られる結果の方が影響力が強いと考えられます。

 

2つ目の例も見ていきましょう。

今度は「最寄り駅で電車を降りる」と「友達とそのまましゃべり続ける」ですが、これは完全にどちらかしか選択できない、両立しない行動です。

最寄り駅で電車を降りる行動と、降りずに友達としゃべり続ける行動は同時には生じません。


A.電車が最寄駅に到着するという状況の中で、電車を降りるという行動をしたら、最寄り駅で降りられるという結果が得られます。

これは電車を降りるこの人にとっていい結果であることがわかります。

一方で、友達とおしゃべりを続けるという行動も選択できます。

この場合も、おしゃべりが楽しいという良い結果があります。

実際どちらを選択するかは、どちらの結果の方が強いのかという点を考える必要はあります。

ただそのためにも「こっちの行動にはこういう結果がある」というのを、しっかり記述できることが非常に大切です。

両立する行動が2つ以上ある

今度は両立する行動が2つ以上あるケースをみていきます。

先ほどは両立「しない」でしたが、今度は両立「する」です。

例でみていきましょう。


先月の電気代の請求に文句を言うシチュエーションです。

請求書に悪態をつきつつ、床に放り投げています。

悪態をつくことと、床に放り投げることは同時にできる行動です。

両方行動できますので、先ほどとは違って両立します。

 

ただ、その行動にくっついてくる、随伴してくる結果はそれぞれ違います。

「なんでこんなに高いんだよ」と文句を言った場合、妻は「本当に高いよね」と共感してくれています。

これはこの人にとっていい刺激、上向き矢印になると考えられます。

請求書を床に放り投げる行動に関しては、「子供みたいなことして(笑)」というまた別の結果が現れますね。

ここで上向き矢印、つまり強化になっていますが、こういう風に言われて場が和むとか嬉しいとかがあり得ます。

これがもし頭にきて、横にある机を蹴るとか、テレビに投げつけるとかになると、妻は「なんてことするの」のように怒る言葉が出てくるかもしれません。

その場合は下向き矢印、つまり弱化になってしまうことも考えられます。

このように両立する行動が2つ以上ある場合だとしても、それぞれの行動に随伴するそれぞれ結果があるという点をしっかり分析することが大切です。

 

次の例をみてみましょう。


これも非常にありがちですね。

問題行動をなんとかしたいというご相談ではよくいただくケースかと思います。

母親から何度も「お風呂に入りなさい」と言われ、返事をしつつ彼女とのLINEを続ける。

同時にできますよね。

母親の目の前にいたりすればちょっと変わるかもしれませんが、部屋の外からこのように言われるということであれば「わかった」と返事をするのと、彼女とのLINEを続けるというのは両立できる行動です。

ただ先程の例と同様に、それぞれの随伴性は変わります。

「わかった」と返事をすると、母親からの催促が一時的に止まります。

彼女とのLINEを続けるというのは、彼女からの返事がもらえるという結果が現れます。

それぞれの随伴性が上向き矢印の結果になるので、行動が両方とも強化されていることが分かります。

ですので「わかった」と返事をしつつも、彼女とのLINEを続けてしまうわけです。

「なんでこんなに高いんだよ」と文句を言いながら、請求書を床に放り投げてしまうわけです。

どちらとも、このようにABC分析すると強化されるということが理解できるかと思います。

 

1つの行動に相補的な2つ以上の結果がある

次は1つの行動に相補的な2つ以上の結果があるケースです。

さきほどまでは2つの行動でした。

両立できることもあれば、両立できないパターンもありました。

今度は1つの行動に対してC.結果が複数あるというケースになります。

同じ影響力をもった複数の結果がある場合の分析です。


ワインバーでワインを飲むという行動に対して、複数の結果が存在しています。

A先行刺激:ワインバーにいます
B行動:ワインを飲む
C結果:美味しい、酔って気持ちいい

美味しい、酔って気持ちいいという結果はどちらも強化の働きをしています。

ワインバーでは積極的にワインを飲むことになりそうですね。

別の例でもみてみましょう。


1時間遅刻して出勤するという行動に対して、これも複数のC.結果が存在します。

A先行刺激:バイトの出勤日
B行動:1時間遅刻で出勤
C結果:店長に怒られる、バイト代が減る

店長に怒られる、バイト代が減るという結果はどちらも弱化の働きをしています。

嫌なことばっかりです。

ですので遅刻することはなるべく避けようとするでしょう。

 

1つの行動に相反する2つ以上の結果がある

次も1つの行動に複数のC.結果が存在するパターンですが、それぞれ相反する結果になります。

複数ある結果が上向き矢印になる場合もあれば、下向き矢印になる場合もあります。

相反する影響力を持った複数の結果が存在します。


先行刺激がさきほどと少し変わります。

ワインバーにいるのは同じですが、価格の高いワインを勧められています。

先行刺激が変わることで結果も変わってきます。

ただワインを飲むだけなら気持ちよかったり、美味しいといったいい結果だけでした。

ただ今回は店員さんに勧められたので、値段の高いワインを飲んでみたわけです。

とても美味しいという先ほどよりもいい強化がある一方で、財布の残金が気になる…どうしようという変化も現れます。

強化の働きをする結果と、弱化の働きをする結果が同時に生じてますね。

相反する2つ以上の結果が存在していることが分かるかと思います。

 

次の例もみていきましょう。


禁煙(の店)と気づかずに食後にタバコを吸ってしまったというケースです。

A先行刺激:禁煙のレストラン、食後、周囲に他のお客さんあり
B行動:タバコを吸う
C結果:食後の一服が美味しい、隣の客に睨まれる、店員に注意される

これも1つの行動に対して複数の結果が存在します。

食後の一服が美味しいという強化の働きをする結果と、隣の客に睨まれたり、店員に注意されたりという弱化の働きをする結果も同時に生じていますね。

 

このように1つの行動に対して結果が1つだけということはほぼなく、いろいろな結果が現れます。

いいものがたくさんのときもあれば、相反するものがあるときも。

相反する結果が同時に生じる場合、強化と弱化の影響力の綱引きになります。

強化の影響力が強ければ行動を繰り返すようになるし、弱化の影響力が強ければ行動をしなくなります。

どちらが実際に影響力が強いのかは、数の多いほうが優勢になる場合もありますし、1つの結果しなないのにそれが非常に強い影響力を持つ場合もあります。

実際に行動が増えているのか、減っているのかを分析し、どの結果の影響力が強いのかを検討することになります。