今回のテーマは「強化と弱化」です。

好子出現による強化 〜 欲しい刺激が現れる

まずは好子出現の強化について見ていきましょう。

好子出現を簡単にいうと、欲しい刺激が現れるということです。

例で説明します。

  • 新発売のカップ麺を食べてみたら美味しかったので、次の日も食べたくなってコンビニで買って食べた。

新発売のカップ麺を食べたら「美味しい」という好子が出現したので、そのカップ麺を食べるという行動が増えていくということです。

時系列でみて行動の前後でどういう変化が起きているかに注目してください。

行動の直前では、当然また食べていませんので、カップ麺の「美味しい」という好子は存在していません。

カップ面を食べた直後はどうなるかというと、今度は「美味しい」という好子が現れます。

行動した後に好子が出現しているので、カップ麺を食べるという行動が増えます。


別の例も見ていきましょう。

  • 職場で上司にアイデアを伝えたら、笑顔で「いいアイデアだね」といってもらえた

行動の前後の変化を分析します。

アイデアを伝える前には上司の笑顔は存在していませんでしたし、「いいアイデアだね」と言われたという事実もまだ存在していません。

これを「上司の笑顔 なし」「いいアイデアだね なし」と書きます。

では、上司にアイデアを伝えた後はどうなるかというと、上司の笑顔や「いいアイデアだね」という言葉が現れたわけです。

同じように「上司の笑顔 あり」「いいアイデアだね あり」と書きます。

さて、この上司の笑顔や言葉は、アイデアを伝えた当人にとって好子、欲している刺激でした。

つまり、上司の笑顔や言葉が現れるので、また上司にアイデアを伝えるという行動が増えていくことになります。


3つ目の例です。

  • ゴーヤの苦味が美味しいので、よくゴーヤを食べる

行動の直前にはゴーヤの苦味はなかったけど、ゴーヤを食べてみたところ苦味が出現したことになります。

この人にとってのゴーヤの苦味という好子が出現したので、ゴーヤを食べるという行動が増えていきます。


以上の3つの例は、どれも「好子出現の強化」といいます。

行動の直後に好子が出現したり、増加したりすると、その行動は将来起こりやすくなります。

行動が増えていくことを「強化」というのですが、その強化の形の一つとして好子が出現することによって強化されているということです。


嫌子消失による強化 〜 避けたい刺激が消失する

次も強化のパターンです。

強化とは何かというと、行動が起きやすくなる、行動が増える、行動を繰り返すようになることですが、好子が出現しない強化もあります。

それが「嫌子消失による強化」です。

避けたい刺激がなくなることによっても、人の行動は増えていきます。

例でみていきましょう。

  • 部屋の床にゴミが散乱していたので、ゴミ箱に捨てた

ゴミ箱に捨てるとゴミという嫌子が消失したので、部屋にゴミが散乱しているときにはゴミ箱に捨てるという行動が起きやすくなります。

また行動の前後の変化を分析してみましょう。

行動の直前にはゴミが存在していましたが、ゴミ箱に捨てるという行動によってゴミがなくなります。

行動の前にあったものが、行動の後にはなくなったという分析になります。


2つ目の例をみていきます。

  • 夏休みの宿題を終わらせた

夏休みの宿題というものが存在していたわけですが、問題を解いて書き込めば宿題が終わる、つまりなくなるわけです。

この人にとっては「夏休みの宿題 あり」という状態から、問題を解いて書き込むことで「夏休みの宿題 なし」に変化しています。

夏休みの宿題は、多くの人にとって嫌なものですよね。

行動したおかげで嫌なものが消失したので、宿題がある時は問題を解くという行動が増えていくと考えられます。


3つ目の例です。

  • 朝、目覚まし時計が鳴ってうるさいの、アラーム停止ボタンを押した

うるさいアラームがずっと鳴っている状態は、嫌な刺激が現れていると考えられます。

そこでアラーム停止ボタンを押すとどうなるかというと、アラームといううるさい音がなくなるわけです。

行動する直前には「うるさいアラーム あり」で、アラーム停止ボタンを押した直後には「うるさいアラーム なし」となります。


以上の例はいずれも「嫌子消失による強化」です。

行動の直後に嫌子が消失したり、減ったりすると、その行動は将来起こりやすくなります。


嫌子出現による弱化 〜 避けたい刺激が現れる

今度は「嫌子出現による弱化」です。

好子・嫌子、出現・消失の組み合わせがあってややこしくはありますが、このあたりは一通り説明した後、最後にまとめます。

嫌子出現による弱化は、一般的な言い方では「避けたい刺激が現れる」になります。

また「弱化」ですので、強化の逆で行動が減っていく、将来行動しなくなっていきます。

つまり避けたい刺激が現れることで行動しなくなっていくのが「嫌子出現による弱化」です。


例でみていきます。

  • 新学年になってクラスで自己紹介をしたら、なぜかクラスの皆に笑われてしまった

クラスで自己紹介したら「笑われる」という嫌子が出現したので、クラスの皆の前で話すという行動が減ってしまいました。

自己紹介する前はどうだったかというと、皆に笑われてはいなかったので「笑われる なし」です。

ところが、自己紹介をしたら「笑われる あり」になりました。

嫌な刺激が現れたんですね。

行動の前後で嫌子が出現するという変化が起きました。

この人は笑われるという嫌子の出現によって、クラスの皆の前でしゃべることが減ったり、避けるようになってしまうことが考えられます。


他の例も見てみましょう

  • 職場で芋けんぴを食べていたら、上司に怖い顔で「仕事中だぞ!」と怒られた

芋けんぴを食べる前は上司は怖い顔をしていませんし、怒られているわけでもなかったので「上司の怖い顔 なし」「仕事中だぞ なし」です。

しかし、芋けんぴを食べた後は上司の怖い顔や仕事中だぞという言葉が現れ「上司の怖い顔 あり」「仕事中だぞ あり」となります。

いままでなかった嫌なものが、行動したことによって現れたため、職場で芋けんぴを食べるという行動が減っていきます。


3つ目の例です。

  • ゴーヤの苦味がマズイので、ゴーヤは食べない

この人にとって食べる前はゴーヤの苦味はありませんので「ゴーヤの苦味 なし」となります。

食べていないので当たり前ですね。

でも、ゴーヤを食べてしまいましたので、この人にとって嫌な刺激である苦味が現れ「ゴーヤの苦味 あり」となります。

直前にはなかった嫌な刺激がゴーヤを食べるという行動によって現れたため、ゴーヤは食べなくなったり、避けたりするようになります。

これも「嫌子出現による弱化」です。

まとめますと「嫌子出現による弱化」は、行動の直後に嫌子が出現したり増加するという経験をすると、その行動は将来起こりにくくなるということです。


好子消失による弱化 〜 欲しい刺激が消失する

強化には2パターンありましたが、弱化にも同じように2つのパターンがあります。

今度は「好子消失による弱化」です。

欲しい刺激が消失するという弱化になります。

例でみていきます。

  • 学校で漫画を読んでいたら先生に没収されてしまった

学校で漫画を読んでいたら、漫画という欲している刺激が消失したので、学校で漫画を読むという行動は減っていきます。

分析してみると行動する前は漫画が手元にある状態なので「漫画 あり」となり、漫画を読んだら没収されてしまったので「漫画 なし」となります。

好子が行動することで消失してしまったわけですね。


2つ目の例です。

  • 彼女の料理に文句を言ったら彼女の笑顔が消えた

それまえニコニコして作ってくれていたり、会話してくれていた彼女ですが、料理を食べて文句を言ったら彼女から笑顔がなくなってしまいました。

文句を言う前は「彼女の笑顔 あり」で、文句を言った後は「彼女の笑顔 なし」です。

彼女の笑顔がこの人にとって好子であるなら、今後、もしかしたらあまり好みでない料理が出てくるかもしれませんが、文句を言うことは減っていくでしょう。


3つ目の例もみましょう。

  • 映画館で騒いだらスタッフに追い出されてしまった

大人からすると当たり前に思えてしまう例ですね。

でも、子供とか騒いだりすることがあると思います。

映画館でなくても、電車の中など公共の場でも騒ぐことがあります。

でも、もしかしたらこの例のような体験をすることで、公共の場で騒ぐということをしなくなったのが大人である私達なのかもしれません。

騒ぐ前は映画という欲している刺激が存在しているので「映画 あり」ですが、騒いで追い出されてしまった後はそれが消失して「映画 なし」となります。

好子がなくなるという体験をしていますので、映画館で騒ぐことは減っていきます。

このようにして公共の場での適切な行動ができるようになっていくのかもしれません。


強化の法則、弱化の法則

まとめますと「好子消失による弱化」は、行動の直後に好子が消失したり減少するという経験をすると、その行動は将来起こりにくくなるということです。

これまで4つのパターンをみてきました。

改めてまとめます。

<図>

まず行動に関連する刺激には「好子」と「嫌子」があります。

それに加え、行動の直後にそれらが「出現」または「消失」します。

好子と嫌子、出現と消失の組み合わせによって、行動が強化されたり弱化されたりします。

好子が出現するのは強化になりますが、嫌子が出現した場合には弱化になります。

  • 好子出現による強化
  • 嫌子出現による弱化

行動したときに欲しているものが現れるなら、その行動は維持されたり、増えていくことはイメージしやすいかと思います。

同様に、行動したときに嫌なものが現れるなら、やりたくなくなりますよね。

そのように理解していただくとわかりやすいかと思います。


消失も同じようにみてみましょう。

好子が消失すると弱化になり、嫌子が消失すると強化になります。

  • 好子消失による弱化
  • 嫌子消失による強化

行動したときに欲しているものが失われるなら、その行動は避けたくなると思います。

また行動したときに嫌なものがなくなるなら、その行動は維持されるし、繰り返されるでしょう。

以上の強化の法則・弱化の法則は、行動を分析する際の基本中の基本です。

自分で例を考えてみるなどして、ぜひ身につけていってください。


強化・弱化についての補足

最後に少し補足をします。

今回の記事ではなるべく簡単な言葉を使ってきましたが、実際の学問における定義もありますのでそこをお伝えします。

好子・嫌子の正しい定義

これまで好子のことを「欲している刺激」、嫌子のことを「避けたい刺激」と表現してきました。

なるべくイメージしやすい、受け入れやすい表現にしたためで、本来は主観的に「欲しい」「避けたい」とするものではありません。

好子なのか嫌子なのかは、結果として行動にどう影響するかではじめて分かります。

行動の直後に現れることで、行動が増えているのであれば、それは好子だったということになります。

また行動の直後に現れることで、行動が減っているのであれば、それは嫌子だったということになります。

好子・嫌子と強化・弱化の違い

ときどき「好子=強化」「嫌子=弱化」と勘違いしてしまう方がいます。

好子や嫌子は行動に影響を与える要因ではありますが、それら好子・嫌子が行動に伴ってどう変化するかが重要です。

行動の直後に好子が出現したり増えたりすれば強化ですし(好子出現による強化)、反対に消失したり減ったりすれば弱化です(好子消失による弱化)。

同じように、行動の直後に嫌子が出現したり増えたりすれば弱化ですし(嫌子出現による弱化)、反対に消失したり減ったりすれば強化です(嫌子消失による強化)。

好子のポジティブなイメージから好子が関わると強化、嫌子のネガティブなイメージから嫌子が関わると弱化と考えてしまいがちですが、実際にはそれらが増えたか減ったかで行動への影響の仕方が変わりますので、注意してください。

効果の法則

ある行動が繰り返されるかどうかは、その行動の結果次第です。

心理学において、最も重要な法則の1つといっていいでしょう。

効果とは、行動に伴う環境の変化のことで、行動すること環境がどう変わるのか(=好子や嫌子がどう変化するのか)が将来の行動を決めます。

効果の法則とは、つまり強化と弱化の法則のことです。

これがどのように働くのかを上手く理解できるようになれば、自分や他人の行動を左右しているものが何かも分かります。

自分自身の行動をマネジメントしたり、子供や生徒、部下の行動が建設的なものになるよう影響を与えることが可能になります。