今回は習得性好子、習得性嫌子についてお伝えします。

一般社団法人行動アシストラボの榎本です。

宜しくお願い致します。


生得性の好子・嫌子と習得性の好子・嫌子

習得性好子・習得性嫌子と書くと、言葉が難しい感じですが、一度学んでいただければそれほどでもありませんので、じっくり読んでみてください。

「習得性」という言葉がありますが、この反対の概念に「生得性」があります。

生得性の好子・嫌子と習得姓の好子・嫌子の違いとは何かを見ていくと分かっていただけるかと思います。

字を見ると、生まれるという字と習うという字です。

これはまさしくそのものなのです。

生まれたときから持っているものが生得性です。

習う、つまり学習によって後から変わってくるものが習得姓です。


例えば生得性の好子・嫌子とはどんなものでしょうか。

生得性の好子・嫌子は、条件付けされていないにもかかわらず、生まれた時から好子・嫌子であるもの。

遺伝的な好子と嫌子です。

人(や動物)にとっては、最初から好子や嫌子であるものが存在します。

生得性の好子の代表例が「水」です。

人が生きるために必要なものですね。

水を欲することは、人や動物の生まれ持った特性でしょう。

食べ物も生きるために必要なものです。

他にも視覚の刺激も、動くものに視線を向ける必要があります。

視覚だけでなく聴覚なども同様ですね。

こういったものが、最初から人や動物に備わっている生特性好子の例となります。


同じように生まれもって嫌なものもあります。

嫌子ですね。

例えば怪我の痛み、病気のときの苦痛などがそうです。

熱すぎる刺激や冷たすぎる刺激もそうでしょうか。

痛みを感じるようなものは、それが初めて味わったものであっても嫌な刺激になりますので、生特性の嫌子です。

他にも腐敗臭や大きな音なども生まれもって避けたい刺激となります。


こうしていくつか挙げてみると何となく分かるかと思いますが、生物として生きるために必要なものは概ね生得性好子になっています。

逆に生存の危機に関わるような危険を示唆するものは避けたい刺激、つまり生得性嫌子になっています。


次は習得性の方をみていきましょう。

文字通り、習って得る好子や嫌子です。

習得性の好子・嫌子は、他の好子や嫌子と対提示(ついていじ)されることによって、好子や嫌子の機能を持つようになったものです。

後天的な好子や嫌子となります。

例をあげようと思えば非常に沢山考えられると思います。

例えば映画のBGMです。

もともとそれ自体は心地の良いものではなかったにしても、非常に好きな映画のBGMに採用されていたら、その音楽を聞くだけで気分がよくなったりしますよね。

他にもコーヒーの香り。

もともと生存に必要であったり、避けるべき刺激というわけではありません。

美味しいコーヒーを飲むとか、喫茶店でゆったり気分良く過ごしているときに、一緒に現れるコーヒーの香りという刺激が次第に心地よいものになっていきます。

仲の良い友人なども習得性の好子になります。

初めてあった人というのは、特に良いものでも悪いものでもないと思います。

その人と一緒にいると良いことが起こる、例えば褒めてもらえたり、心地の良い会話ができたり、奢ってもらえたりとか、そういったことが現れると、その友人自体が「良い人」「良い刺激」つまり好子に変わっていくわけです。

他人の視線はどうでしょうか。

他人からの視線には良い場合と悪い場合があります。

人と視線とともに良い体験をすれば、対提示によって「他人の視線」自体が良い刺激になっていきます。

そうなると他人の視線を得たいがために、みんなの前に出るとか、ふざけたりおちゃらけたりして注目されるような行動をするようになるかもしれません。

このように、もともと大して良いものではなかったけど、他の良いものと一緒に体験したり現れることで、好子としての機能をもつようになったものが習得性の好子なのです。


習得性の好子と同様に、習得性の嫌子もあります。

後天的に学習した嫌子です。

例えばカエルがとても嫌いな人がいます。

なぜカエルが嫌いになったのか、その過程を考えてみると、はじめはカエル自体は良いものでも悪いものでもなかったはずです。

ただカエルと一緒にとても嫌な体験、触ったときの感触が気持ち悪かったとか、カエルが死んでいるところを見たとか、そういったことによって変える自体が嫌で避けたいものになってしまうことがあります。

他にもカラオケで歌う機会などはどうでしょうか。

最初カラオケで歌う機会は良いものでも悪いものでもなかったはずですが、歌うことで周りからのシーンとした視線だったり、「あの人、歌が下手だ」と思われているという想像や、直接「へたくそ」と言われた経験などがあると、カラオケで歌う機会自体が嫌なものになっていきます。

あとは上司などでも同じようなことが起き、いつもその上司といると怒られたり、注意されたりして嫌な気持ちにさせられると、対提示によって上司自体が嫌子になっていきます。

そうすると上司がいないところで仕事するようになったり、上司が来たら外出してなるべく接触しないようにするといった行動が生じるようになるかもしれません。

先程、他人の視線を習得性好子の例で取り上げましたが、これは習得性の嫌子にもなりえます。

他人の視線とともに嫌な体験、例えば先程書いたカラオケで歌う場面で嫌な思いとともに他人の視線を感じてしまうと、次第に他人の視線そのものが嫌で避けたい刺激になっていくことがあります。

そうするとなるべく他人からの視線、注目を集めいないよう振る舞うことになるかもしれません。


ここまでいくつか例を見てきましたが、好子や嫌子にはもともと人や動物が生まれもっている生得性のものがあります。

一方で、最初は好きでも嫌いでもなかったけど、いろいろな体験とともに他の好子や嫌子と対提示されることによって、後天的に好子化したり嫌子化したりする習得性のものがあります。

生得性の好子・嫌子、習得性の好子・嫌子があるということを知っておいてください。

対提示によるレスポンデント条件づけ

次はここまで何度か出てきた「対提示」について詳しくお伝えします。

対提示はレスポンデント条件づけを利用した手続きで、中性刺激を無条件刺激と同時に提示することで、中性刺激を条件刺激に変化させます。

専門用語が出てきてややこしいので例で説明します。

まず、エサや食べ物などの無条件刺激があります。

これらは生得的な好子で、生まれたときからもともと欲している刺激です。

エサや食べ物が提示されると、人や動物は唾液を分泌します。

こういった無条件刺激を使って対提示します。

もともと良い刺激でも悪い刺激でないものを中性刺激といい、例えばベルの音などが該当します。

この中性刺激であるベルの音を無条件刺激であるエサと同時に出現させると、次第にベルの音が好子に変化していきます。

そうすると、ベルの音を鳴らしたら、エサが提示されたときと同じように唾液を分泌するようになります。

パブロフの犬という有名な実験があり、ベルを鳴らすと唾液が出るのは、まさしくこの学習の仕組みが背景にあります。


少し整理しましょう。

対提示とは、ベルの音のような中性刺激を他の好子や嫌子と組み合わせて提示する手続きのことです。

対提示によって中性刺激が条件刺激、つまり好子や嫌子に変化することになるのです。

ベルの音は良いものでも悪いものでもありませんでしたが、生まれたときから良いものであったエサや食べ物とつい提示されることで、ベルの音自体が好子になるという仕組みです。

良いものでも悪いものでもなかったベルの音を中性刺激といい、対提示によって好子としての機能を得たあとは条件刺激といいます。

また中性刺激とはレスポンデント行動を制御しない刺激と説明することもできます。

ベルの音を聞いても、何かのレスポンデント行動が生じることはありませんでした。

ただ条件刺激となったあとは、対提示に使われた無条件刺激と同じレスポンデント行動を制御するようになります。

エサや食べ物が唾液分泌を促していたように、ベルの音も唾液分泌を促すようになるのです。

好子や嫌子はどのように形成されるか

話を習得性好子・嫌子に戻します。

習得性の好子や嫌子はどのように形成されるのでしょうか。

カエル嫌いになったF君の例で説明します。

カエルというのは生得性の嫌子ではなく、習得性の嫌子です。

どうしてカエルが嫌子になったのか、その過程をみてみましょう。

小学生のF君にとって、カエルは特に嫌なものではなかったのですが、ある日、顔の上に大きなカエルが乗っかってきました。

その時の感触があまりにも気持ち悪かったので、その日以降、カエルを避けるようになってしまいました。

カエルの感触という生理的に嫌な刺激と、カエルそのものとが対提示されたため、中性刺激だったカエルに対しても嫌悪感を感じるようになり、習得性の嫌子となったわけです。

更に不幸なことに、学校の先生がF君のカエル嫌いを克服させようとします。

もしかしたらいい先生だったのかもしれませんが、F君から見ると嫌子であるカエルと先生とが繰り返し対提示されることになります。

今度は次第に先生のことが嫌いになり、避けるようになりました。

先生が習得性の嫌子になったということです。

これが習得性の好子・嫌子の形成過程になります。

最初は生得性の好子や嫌子と対提示されることで、新たな好子や嫌子を獲得します。

そうすうと今度は習得性の好子や嫌子との対提示でも、新たな好子や嫌子が生じるようになります。

このようにして、私達は様々な刺激を好子や嫌子として扱うようになっていきます。

まとめ

好子や嫌子には生まれたときから機能している生得性のものがあります。

また最初は良いものでも悪いものでもなかった刺激が、後天的な学習によって好子や嫌子となる習得性のものもあります。

生得性の好子・嫌子は、同じ種であれば基本的に同じようなものが好子や嫌子になります。

一方で、習得性の好子・嫌子は人によって全く異なります。

なぜそうなるかというと、人それぞれの成長過程の中で、それぞれに異なった好子や嫌子と中性刺激とが対提示されるからです。

ちょっとしたタイミングの違いや経験の違いで、好子や嫌子となるものも全く異なってしまうのです。

また習得性の好子や嫌子が形成される背景には、レスポンデント条件づけという学習の仕組みが働いていることもお伝えしました。

以上となります。