行動分析学の基礎理論、その3「好子と嫌子」をお伝え致します。

では今回は「好子と嫌子」ですが、まず好子(コウシ)から説明します。

簡単にいうと好子とは「欲している刺激」になります。

好子がどんなものか例を使ってみていきましょう。


好子の例1:お腹がすいたので、コンビニでおにぎりを買った

コンビニに立ち寄り、買い物をするとおにぎりが手に入ります。

一般的な見方では「お腹が空いたのでコンビニでおにぎりを買った」となりますが、行動分析学的な見方では「おにぎりが手に入るので、コンビニに立ち寄り買い物をした」と捉えます。

この文脈において欲している刺激は何かというと「おにぎり」になります。

おにぎりによって、コンビニに立ち寄り買い物をするという行動が促されたと考えてみてください。


別の例もみていきましょう。

好子の例2:職場で上司にアイデアを伝えたら、笑顔で「いいアイデアだね」と言ってもらえた

職場で上司にアイデアを伝えると、上司の笑顔や「いいアイデアだね」という言葉が現れます。

この場合、欲している刺激は上司の笑顔や「いいアイデアだね」という言葉になります。

つまり、行動分析学的な見方では「上司の笑顔や言葉が得られるから、上司にアイデアを伝えるという行動が増えていく」となります。


好子の例3:ゴーヤの苦味が美味しいので、よくゴーヤを食べる

この場合はゴーヤの苦味が欲している刺激となります。

ゴーヤが好きなのでゴーヤを食べると捉えるのではなく、ゴーヤの苦味が得られるのでゴーヤを食べると捉えるのが行動分析学的な見方に慣れるコツです。

ゴーヤの苦味が好子なので、ゴーヤを食べるという行動が促されたり増えたりします。


好子についてまとめます。

  • 好子とは、行動の直後に現れることで、その行動が次に起きる頻度を増やすもの

少しややこしい感じはするかもしれませんが、行動が繰り返されたり増えている場合に、行動の直後に何かが現れていないかを見てみてください。

もし何かの刺激が出現しているようであれば、その刺激は「好子」ということになります。

これまでの例でいえば、コンビニで買い物した直後には「おにぎり」という好子が出現しています。

あるいは上司にアイデアを伝えた直後には上司の笑顔や言葉という好子が、ゴーヤを食べた直後には「ゴーヤの苦味」という好子が出現しています。


一般的な見方では行動の前に何か行動の原因があるように捉えますが、行動分析学では行動の後に注目します。

行動の後に何か刺激が現れていないかに注目してください。

加えて、その行動がまた次に起きるのか、それとも逆に起きなくなってしまうのかをみてください。

行動がどんどん増えているようであれば、行動の直後に現れた刺激は好子だったということがわかります。


では次に嫌子(ケンシ)についてです。

嫌子とは、簡単にいうと「避けたい刺激」になります。

好子は「欲している刺激」でしたので、反対ですね。

例をみながら覚えていきましょう。


嫌子の例1:授業中におしゃべりをしていたら、先生に注意された

授業中におしゃべりをしたらその直後に「先生の注意」が現れました。

この場合、先生の注意が嫌子にあたります。

授業中におしゃべりをすることが、注意を受けることによって減っていくことになります。

なぜなら、おしゃべりをすると避けたい刺激が現れてしまうから。


他の例でもみていきましょう。

嫌子の例2:職場で芋けんぴを食べていたら上司に怖い顔で「仕事中だぞ」と怒られた

芋けんぴを食べていたら上司に怒られたため、もう食べなくなったという例です。

職場で芋けんぴを食べている最中に、上司の怖い顔や「仕事中だぞ」という注意が現れています。

この場合、上司の怖い顔や注意が嫌子となります。

嫌子が出現しているので、職場で芋けんぴを食べなくなっていきます。


嫌子の例3:ゴーヤを食べたら苦かったので食べるのをやめた

好子でも同じ例が出てきました。

何が違うのかに注目してもらうといいかと思います。

ゴーヤを食べると、直後にゴーヤの苦味が現れます。

ゴーヤの苦味というのは、もしかしたら人によっては避けたい刺激かもしれません。

美味しい欲する刺激ではなく、不味い避けたい刺激。

同じようにゴーヤを食べて、次からゴーヤを食べることが無くなったとしたら、この場合、ゴーヤの苦味は嫌子になります。


このように

  • 行動の直後に現れることで、その行動が次に起きる頻度を減らすもの

が嫌子です。

好子と嫌子の定義の違いに注目してください。

同じゴーヤの苦味が好子にも嫌子にもなりえますが、そのどちらであるかは行動の頻度をどう変化させているかで分かります。

好子の場合はその後その人の行動がどうなっていたかというと、行動が増えていました。

嫌子の場合は反対に、行動が減っていきます。


つまり、ゴーヤの苦味が現れて、その後、ゴーヤを食べる行動が増えたのであればゴーヤの苦味は好子です。

またゴーヤを頼む、料理を作って食べるといったことが起きるかもしれませんね。

反対に、ゴーヤを食べる行動が減ったのであれば、ゴーヤの苦味は嫌子になります。

メニューのゴーヤチャンプルーや、スーパーで売っているゴーヤ等を視界に入れるのも避けるかもしれませんね。


ややこしいですが、今回、一番理解していただきたい部分なので繰り返します。

行動の直後に現れることで、その行動が次に起きる頻度を増やすものなのか減らすものなのかに注目してください。

増やすものであったらそれは好子だし、減らすものであったらそれは嫌子になります。


まとめです。

好子とは欲している刺激、嫌子とは避けたい刺激です。

ただこれはあくまで分かりやすく表現しているだけで、正しくは行動の増減をみる必要があります。

行動の直後にある刺激が現れたとして、次のその行動が増えたのかそれとも減ったのかをみることで、刺激が好子だったのか嫌子だったのかが明らかになります。

とはいえ、やってみなければ分からないというのでは使いづらくなります。

ですので今までの経験からあたりをつけたりしますし、大抵の人に適用できる恐らく好子(あるいは嫌子)だろうというものもあります。

人の笑顔であったり、お金であったり、食べたいものであったり。

一般的にみんなが好きなものごとは、好子になる可能性が高いです。

逆に怒られることだったり、痛みを感じることだったり、好みはありますが一般的に不味いといわれているものだったりは、嫌子になる可能性が高いです。


ただ気をつけていただきたいのは、このようにして考えたものは必ず好子だとか嫌子だというわけではありません。

あくまでも仮定でしかないのです。

仮の好子や嫌子を使って、実際に望ましい行動が増えたのか、あるいは問題行動が減ったのかを確認することで、ようやく好子や嫌子が明らかになるということは忘れないでください。