今回は行動分析学的な「行動とは何か」をお伝えしていきます。

行動の定義その1:死人テスト

まず最初に「死人テスト」です。

ちょっとドキッとする言葉ですが、人や動物の行動について、何が行動で何が行動ではないかの見極めは案外難しいです。

そのために「死人テスト」というものがあります。

英語で言うとdead man test(デッドマンテスト)で、それをそのまま日本語に直訳していますので死人というインパクトのある言葉が出てきますが、行動を定義するときに「死人テスト」をすると分かりやすいのです。


では「死人テスト」とは何か。

行動分析学では「死人にできることは行動ではない」と定義します。

言い換えると、死人にできないことはすべて行動です。

つまり、死人テストに不合格の場合、それは行動ではないということになります。

もう少し具体的に見ると

  1. 否定の表現になっているもの:〜しない
  2. 受け身になっているもの:〜される
  3. 状態になっているもの:〜している

は死人テストで不合格になることが多く、これらは行動ではないということになります。

つまり行動に該当するもの例えば、次のようなものです。

  • 歩く、話す、書く、立ち上がる

これは死人にはできるでしょうか、できないでしょうか。

もちろん死人にはできないですね。

死んだ人には歩いたり話したり、書いたり立ち上がることはできません。

つまり死人テストをしたときに「死人にはできない」となるのでこれらはすべて行動であると考えます。


では行動ではないものはどういうものかというと、先程書いた

  1. 否定:〜しない
  2. 受け身:〜される
  3. 状態:〜している

といった表現の場合が該当します。

例えば、歩かない、しゃべらない、食べない、書かない、立ち上がらない等は何も動きがないので死人には得意なことです。

よって、死人にもできることなので、これは行動とは定義しません。

同じように褒められる、怒られる、話しかけられるといった受け身の行為も、死人にもできちゃいますよね。

ですので、やはりこれも行動ではありません。

あとは状態、例えば、静かにしている、じっとしている、動かないでいる、止まったままでいる、寝たままでいるなども死人にできることですので、やはり行動ではありません。

このように「行動はなんでしょう?」と問われたときに死人テストをしてみて、「〜しない」とか「〜される」とか「〜している」という表現になっているなら、それは行動でないということになります。

死人テストをクリアすることが、それが行動であるための1つの条件なのです。


行動の定義その2:具体性テスト

同じように行動を定義するテストが、もう1つあります。

それが「具体性テスト」です。

行動は具体的に表現されるものでなければいけません。

具体性テストのわかりやすいやり方として「ビデオクリップ法」があります。

それはビデオでその場を撮影して、写すことができるかどうかで判断するというものです。


例えば「ダイエットする」は具体的でしょうか?

一見「ダイエットする」は行動であるように思えますが、一口にダイエットといっても色々な行動が想定できます。

カロリー制限をしたり、運動したり、いろいろなシチュエーションでいろいろな行動があります。

単に「ダイエットする」だけではビデオに写すことができません。

つまり「ダイエットする」というのは、特定の具体的な行動ではないのです。

一方でこれを「ジョギングする」と表現すれば、ジョギングをしているシーンをビデオで撮影して写すことが可能です。

あとからビデオを再生した人が見たときに「これは何をやっているんですか?」と聞いたときに「ジョギングしています」とすぐに答えられるはずです。

これがビデオクリップ法による具体性テストです。


一見行動に見えることも、色々な行動の積み重ねであったり、いろいろなやり方があるものだと、それは1つの行動とは定義できません。

具体性テストをパスできないからです。

もっと具体的に、この人はこれをしているとわかるレベルで表現して、はじめて行動といえるのです。

いくつか例でみていきましょう。

ダイエットするだけだと具体的な行動ではありませんが、これを「毎日15分ジョギングする」「食事内容をメモに残す」「食べたもののカロリーを計算する」とすれば具体性テストをパスでき、行動となります。

これらはビデオにそのシーンを撮っていたら、ジョギングしているな、食事内容のメモを書いているな、食べたもののカロリーを計算しているなということが分かるはずです。

このレベルまで落とし込んで初めて行動といえます。

他にも「節約する」をもう少し具体的にするとどうなるでしょうか。

例えば「レシートを財布に入れる」「家計簿をつける」「今月使える金額を計算する」のように、ビデオに撮ったときに具体的に何をしているかがわかるレベルで、はじめて行動と呼べます。

出版する、だとどうでしょう。

一見、行動のように思えてしまいますが、具体的に行動しているシーンはイメージできません。

これも「編集者と打合せをする」「本の文章を書いて企画書を出版社に送る」といったように、ビデオで撮った際に何をしているのか分かるくらいになると、具体的な行動といえるでしょう。


死人テストに加えて、もっと具体的でなければ行動とは言えないというのが具体性テストです。

死人テストと具体性テストの2つをクリアしたものが行動と定義されます。

死人テストをパスしているのか、具体性テストをパスしているのかを見定め、自分で「行動」を定義できるようになりましょう。


オペラント行動とレスポンデント行動

続いて「オペラント行動とレスポンデント行動」です。

実は行動には大きく分けて2種類あり、それがオペラント行動とレスポンデント行動です。

まず、オペラント行動とは何か。

刺激に誘発され自動的に反応するのではなく、自発的に行う行為のことです。

一般的に行動という場合は、こちらを指すことが多いです。

行動を変容するために、分析したり介入したりする場合、これらの行動は多くの場合オペラント行動です。


では、もう1つのレスポンデント行動とは何でしょうか。

これは、特定の刺激に誘発される自動的な反応、反射等が該当します。

次の3つの例は全てレスポンデント行動です。

例えば「S:暑い気温」という刺激があったとき、「R:汗が出る」というレスポンデント行動が誘発されます。

Sと書いてあるのはstimulus(スティミュラス)、刺激です。

Rはrespondent(レスポンデント)のRです。

他にも「S:熱いやかん」に触って誘発される行動は何かというと「R:手を引っ込める」となります。

あるいは「S:後ろから「ワッ」と言われる」という刺激からは「R:びっくりする」が誘発されます。

刺激によって行動自体がそのまますぐに誘発される、反射的に誘発される場合、これをレスポンデント行動と言います。

自発的にやろうと思ってやっているわけではなく、刺激によって自動的に誘発されます。


まとめると、オペラント行動の特徴は「自発的な行動」であり、レスポンデント行動の特徴は何か「特定の刺激によって誘発される反射行動」です。

例で比較して見るとわかりやすいかと思います。

いかがでしょうか。

レスポンデント行動は自発的な行いではなく、刺激によって起こる生理現象や反射になります。

これはら行動とは見られないことが多いですが、立派な行動です。

なぜかというと「死人にはできない」ことだからです。

死人には、汗を出すことも、寒くて震えることも、恐怖を感じることもできません。

死人テストをパスした立派な行動です。

ただ一般的にイメージする行動である「オペラント行動」とは違いがある、という点を押さえておいてください。


繰り返しますが、レスポンデント行動は刺激によって誘発されるもの、反射的にやるものです。

オペラント行動は、自発的に行う行為です。

なぜこのように行動を2つに分けて定義しているかというと、それは学習のメカニズム(条件付け)が異なるから。

オペラント行動は強化と弱化。

レスポンデント行動はレスポンデント条件づけ。

学習のメカニズムが異なると、なぜ行動が生じるかを分析したり、より良い方へと変容するやり方も変わります。

これについては今後学んでいきましょう。


行動とは何か?

今回は「行動とは何か」というテーマでお伝えしました。

まず死人テストをパスするかしないか。

もし死人テストをパスしないようなら、それは行動とは定義しません。

死人テストはパスしたら、次は具体性テストはパスするかしないか。

パスしないならやはり行動ではありません。

ダイエットする、節約するといったような、一見行動のように見えるけど、具体性に欠けるので行動とはみなしません。

もっと細かく分解して、具体的な1つ1つの行動として定義する必要があります。

具体性テストもパスしたのであれば、それらは行動となります。

そして行動には、自発的に行動するオペラント行動と刺激に対して反射的に行動してしまう反応であるレスポンデント行動があります。

オペラント行動なのか、レスポンデント行動なのかで学習メカニズム(条件付け)が異なりますので、これによって分析の仕方や改善の仕方も変わってきます。

次:レッスン3. 好子と嫌子