今日のテーマは「プロンプトとオペランダム」です。

これまでと同じように例をみながら考えてみましょう。

プロンプトとは


小さい子供に横断歩道の渡り方を教える場面です。

青信号SDの時に「左右を確認しなさい」と教示し、子供が左右を確認した結果、安全が確認できています。

次に同じく青信号SDの時に「渡りなさい」といいながら背中を押しています。

子供はそれに従い横断歩道を渡り、向こう側に渡れたという結果を得ています。

この中で「左右を確認しなさい」という教示や、「渡りなさい」と言いながら背中を押すことがプロンプトです。

 

他の例も見てみましょう。


レストランで友人がメニュー表を見つけられないでいたので、指でさして教えてあげています。

友人はそのメニュー表を見て注文し、料理が出てくるという結果を得ています。

ここでは「メニュー表を指して示す」がプロンプトです。

 

3つ目の例です。


部下の結婚式で主賓の挨拶をすることになったので、スピーチのための原稿を用意することにしました。

原稿をみながらスピーチすることで、無事終えることができました。

この場合は「スピーチの原稿」がプロンプトになります。

 

つまりプロンプトとは何か?

プロンプトとは、正しい行動が起こる確率を高める補助刺激です。

改めて例を見直してもらえば、プロンプトがあることで正しい適切な行動を実行しやすくなっているのが分かるかと思います。

横断歩道を渡る前に左右を確認したり、適切なタイミングで横断歩道を渡ったり、レストランで料理を注文したり、結婚式でスピーチしたりできていますよね。

プロンプトがあることで、プロンプトが無い時よりも正しい行動が生じやすくなっています。

プロンプトの種類

プロンプトにはいくつか種類があります。


1つ目は言語プロンプトで文字通り言葉を使ったプロンプトです。

言葉を使って教示したり、説明したり、ヒント・助言を与える、質問する等が該当します。

例えば母親が寝る前に「歯磨きしなさい」といったり、ファストフード店でトレーを返す場所に「返却口」と書いてあったりします。

こういったものが言語プロンプトです。

 

少し、プロンプトがなかったらと想像してみてください。

母親(それ以外の人にも)に歯を磨くことを教示されない子供は、歯磨きという行為を覚える機会が無いかもしれません。

ファストフード店でトレイを返す場所が書いてなかったら、慣れない人はどうすればいいかすぐには分からないでしょう。

世の中にはたくさんの言語プロンプトがあります。

それらがどれだけ私達の正しい行動を引き出しているかを意識してもらえるといいかと思います。

 

続いて身振りプロンプトです。

身体動作を用いたプロンプトになります。

ジェスチャーであったり、指差しで示したり、身振り手振り等を使います。

前に例であげたレストランのメニュー表を指で指して伝えるのが該当します。

あるいは口に人指し指を当てて静かにするように促したりするのも身振りプロンプトです。

 

3つ目はモデルプロンプトです。

行動を実演してみせるプロンプトです。

実際にやってみせたり、模範演技、実演映像などを使います。

例えば、SuicaなどのICカードで自動販売機のジュースを買う時、もし買い方が分からない人がいたら購入するところを見せればすぐに使い方が分かるかと思います。

あるいは自動車の教習所で、正しい運転の仕方の映像を見せたりするのもモデルプロンプトになります。

 

最後にもう一つ、身体誘導プロンプトです。

身体的に手助けするプロンプトです。

手を取って移動を誘導したり、手取り足取りする等が該当します。

例えば、書道の練習で先生が後ろから手を取って正しく書けるように誘導したり、コンビニで買い物をする際、レジ待ちの正しい位置に手を取って誘導するといった使い方になります。

他にもスポーツの場面では多く使われる方法ではないかと思います。

プロンプトの種類

続いてオペランダムについて説明します。

オペランダムは弁別刺激 SD(エスディー)と混同しがちです。

弁別刺激SDは、強化や弱化の機会を示唆するものでしたね。

よく分からないという場合は、下記のページを読み返してみてください。

 

ではオペランダムとは何でしょうか。

弁別刺激SDとの違いをみながら理解していきましょう。


1時からO先生の番組が放送される、というのは弁別刺激SDになります。

番組の放送がなければ、番組が見られるという結果が出現しません。

ではオペランダムは何かというと、B.行動の記述に含まれている「TV」になります。

 

オペランダムの定義は「人間や動物が操作する環境の一部」になります。

弁別刺激SDの「O先生の番組が放送される」は「番組が見られる」という結果のON/OFFに影響していますが、オペランダムの「TV」は行動が実行可能かに関わってきます。

番組を観るためには、TVという環境が備わっている必要がありますよね。

このように行動に伴って操作するような物や環境を「オペランダム」といいます。

 

もう1つの例を見ていきましょう


仕事中というのはSDになります。

仕事中だからこそ、一時的に仕事から解放されるという結果が出現します。

仕事中でないとこの結果はありえません。

一方、そもそもスマホでゲームをするためには「スマホ」自体が無いと実行できません。

行動するときに必要な物や環境ですので、この例でスマホはオペランダムになります。

 

他にも野球でバッティングするためにはバットが必要ですし、テニスをするならラケットが絶対に必要です。

繰り返しますが、オペランダムとは人間や動物が操作する環境の一部です。

その行動をするために欠かすことのできない必要なものの一部、と考えてもいいでしょう。

弁別刺激SDとオペランダム

「弁別刺激」と「オペランダム」の違いを再度確認します。

オペランダムを理解するためのポイントです

 

ポイント1、オペランダムが無い、または取り除くと、たとえ強化されやすい状況であっても行動自体を実行することができなくなってしまう。

先ほどの例では「1時からO先生の番組が見たい、О先生の番組を見る」という機会は与えられています。

1時から番組は放送されわけです。

ただ番組を見るための物体(TV)がないと、好子は出現しなくなってしまいます。

 

理解のポイントのその2です。

オペランダム自体が存在しても、SΔ(エスデルタ)、つまり弁別刺激自体が無い状態では、実行してもその行動は強化されません。

TVというオペランダムはある、ただし、今はО先生の番組が放送される時間帯ではない(SΔ:エスデルタ)。

これではいくらTVをつけても、番組という好子は得られません。

 

弁別刺激SD(エスディー)は強化・弱化の機会(ON/OFF)を示します。

一方、オペランダムは行動の機会(ON/OFF)を示します。

この違いを理解してください。

 

本記事では「プロンプト」と「オペランダム」についてお伝えしました。

行動をサポートする刺激である「プロンプト」は、なかなか行動が起きないときによく使います。

4種類のプロンプトをご紹介しましたので、どの場面でどのプロンプトを使うのが適切なのかを確認しておいてください。

後半のオペランダムは弁別刺激と混同して分かりにくくなりがちですが、弁別刺激SDは強化・弱化の機会を示し、オペランダムは行動の機会を示します。