みなさんこんにちは。

一般社団法人 行動アシストラボです。
こちらでは、定期的にあばらぼ(※行動アシストラボのかわいい通称です)メンバーによるコラムをお届けします。

今回のテーマは、『社労士が送る「一歩先行く上司のマネジメント力」』です。

行動分析学は、職場での社員教育にも強力な力を発揮します。

 

●猫も爆走「対提示手続き」

仕事での業績向上には、良好な人間関係が欠かせません。
上司として自分の抱える部下との関係を良好にするには、自分が部下に好かれていることも必要要件の1つです。

では、好かれる上司、嫌がられる上司は一体どこで差ができるのでしょうか?
またどうすれば好かれる上司になれるのでしょうか。
キーワードは「対提示手続き」。
「対提示手続き」とは二つの刺激を同時に出現させること。
例えば「ベルの音」と「エサ(食べ物)」。
エサ(食べ物)は誰にとっても生まれながらにして好子です。
一方で、「ベルの音」は何の強化経験もない場合には好子でも嫌子でもない中性刺激です。
それが、エサを出すと同時にベルを鳴らすことで、「ベルの音」という刺激と「エサ」という刺激が「対提示」されたことになり、元々は好子でも嫌子でもない中性の「ベルの音」自体が好子となる、という感じです。
この方法は動物のトレーニングなどでよく使われています。
笛の音をエサと対提示させて、笛の音自体を好子にすることで、
タイミングを逃さず好子の刺激を出現させられるわけです。
イルカのトレーニングなどでもよく行われますね。

ツナ缶を開けるとすごい勢いでやってくる我が家の猫は、開ける音自体が中身と一緒に現れる対提示手続きにより、強力な好子になっているようです。

 

●エサで好かれろ

さて、好かれる上司。

最初は部下にとって上司は中性な存在です。

でもいつも上司がいる時に嫌なこと(怒られる・嫌味を言われる)が対提示されると、上司そのものが嫌なものになってしまいます。
逆にいつも良いこと(褒められる・認められる)が対提示されると、上司そのものが好子になっていくわけですね。

嫌がられる上司になってしまうと、上司そのものを避けるようになってしまい(嫌子消失による強化)、業務にも育成にも悪い影響が出てしまいます。

対提示の際には、元々生まれつき好子として機能するものを使うと成り立ちやすいです。食べ物とか飲み物とか。

結論:
上司はいつもおいしいものをおごりましょう。

 

●好かれるには「エサ」だけじゃない

あなた(上司)は褒める派ですか?それとも叱る派ですか?

ちなみに、企業研修などで部下に「あなたはどちらのタイプ?」と聞くと、「褒められると伸びる」という人が8割方でしょうか。

つまり、「エサ」は生まれつき誰にとっても好子ですが、「褒め」というのも多くの人にとっては好子になりえるということです。
ただ、この「褒め」も正しいタイミングで適切に用いないと効果は得られません。
また、実際の社会においては実は「褒める」よりも「叱る」の方が多く見られることもありまが、
「褒める」は正しくて「叱る」は間違い、というわけでもありません。
褒めると叱るはを適切に用いることによって組織環境をより効率的に向上させることができるのです。

 

●「褒める」も「叱る」も強化なのです

よく対立で用いられる「褒める」と「叱る」ですが、よくよく考えると、時間的な違いであって対立する行動ではないということが分かります。
ポイントは「望ましい行動」の前後を見るということ。
望ましい行動をした後に「叱る」ことはあまりしませんね。
行動を何もしていない場合もしくは間違った行動をしている場合、つまり「望ましい行動」が出現する前のみに、「叱る」ことは用いられます。

一方、まだ望ましい行動をしていない段階で「褒める」ことはあまりしません。
「褒める」は「望ましい行動」の後に出現する行動です。

ABC分析において「望ましい行動」をB(行動)に持ってくると、
「叱る」はA(先行条件)で、「褒める」がC(結果)でしょうか。

叱ることで行動するのは「嫌子消失による強化」です。
褒めることで行動するのは「好子出現による強化」です。

 

●その使い分けとは

『すぐに行動してほしいケース』では、叱ることで行動が引き起こされるので有益です。即効性があります。
でも、嫌子が消失してしまったら、また次の嫌子(つまり「叱る」こと)を出現させないと行動は引き起こされません。
なぜなら、「叱る」が先行条件になっているからです。
いつも、叱ることが必要になってきます。

一方、『行動を繰り返す』ためには、好子を結果に出すとよいです。
望ましい行動が出たら間髪入れず「褒める」。
望ましい行動が出るまでは根気がいりますが、自主的に繰り返すことには効果がありそうです。

このように「どちらか一方」ではなく、やはり「褒める」「叱る」を両方使いこなすことができると、有能な上司になれそうです。

行動しない人、間違った行動ばかりの場合は「叱る」。
でもそれだけでは習慣化しないので、望ましい行動をしたら「褒める」。このデザインです。
今までの日本の組織では、行動を引き起こす「叱る」はみんなやるけれど、その行動のあとの「褒める」が不足していたのかもしれません。
だから、最近では「褒める」や「承認」で育成をするという方法が増えてきているのではないでしょうか。

ちなみに、これを娘で実験していましたが、最近やたら自分に自信を持ち調子に乗りすぎています。
さてこれは成功なのか失敗なのか。。。

 

●更なる成長には「消去バースト」

行動分析学勉強していて、個人的にこのバーストってヤツが面白いな~と思っています。
正確には消去バーストでしょうか。

まず、消去とは。
それまで強化されていた行動が、好子が出現しなくなるなどして、行動が減少し、強化される前まで戻ってしまうということ。
そして消去バーストとは、この消去される前に一時的に行動の頻度が増えたり強さが増すということです。

例えば、
★自販機でボタンを押してもジュースが出ない

ガチャガチャボタンを押す

★ボールペンのインクが書いている途中で切れた

力を入れてグルグル紙に押し付ける

★呼んでいるのに、相手が聞こえていない

大きい声で何度も呼ぶ

では、例えば付き合っていた恋人が、自分に冷たくなった・・・。
こんなときはどんな消去バーストが起こるでしょうか??

・・・ストーカーになる。

組織のマネジメントで消去バーストを活用できるかもしれません。
最初のうちは褒めて褒めて、好子をどんどん出し、強化をすすめていく。
そのうち、褒めることを抑えて意図的に消去バーストを起こさせる。
すると、「あれ?ここまでやったのに褒められないぞ?これならどうだ!これならどうだ!」
のようにして、今までは起こしたことのない行動を起こす可能性が高まります。
そのときに現れた新しい行動の中には、より望ましい行動も含まれていることでしょう。
その行動を間髪入れずに「褒める」などして強化していくことで、部下の成長を促すことができるのです。
いわゆるアメとアメ無しをうまく使ったマネジメントができる上司でしょうか。

ただし、「消去」バーストですので、そのまま好子を提示しないままだと、
「やってもムダ」となり行動が消去されてしまうので要注意です。

いかがでしたか?
上司として良好な職場環境を築くにあたり、エサを使うことや、褒める・叱るを適切に用いること、
さらには理解した上で「消去バースト」を起こさせることで部下のさらなる成長を促す。
ここまでが実現できるだけで、一歩も二歩も先をいくマネジメントが可能になるのではないかと思います。